Date:  Wed, 01 Aug 2007 17:15:10 +0900
Subject:  【オブジェクト倶楽部: 2007-27号】
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                          No.196 2007/08/01

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┣【コラム】思いやり駆動開発(ODD)前編
┣【コラム】iPhoneは日本の壁を破るのか?
┗【アンケート】気になるシステム業界 ホントのところ

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┗【コラム】思いやり駆動開発(ODD)前編

思いやり駆動開発(ODD)とは、ソフトウェア開発を成功させる、もっともシンプ
ルな「こころがけベースド・ アプローチ」(KBA)の1つである。
オブジェクト倶楽部2007夏イベントで、五十嵐邦明さんによって発表された。
[*1]ここでは、私なりにこのコンセプトを膨らませてみたい。

ソフトウェア開発はコミュニケーションでできている。ソフトウェアの欠陥が
発生しやすいのは、人と人の境界、プロジェクトとプロジェクトの境界。
そしてそこにはコミュニケーションが生まれている。コミュニケーションには
相手があり、その相手を「思いやる」ことが、大切だ。
読み手のことを思いやるコードを書こう。システムのユーザを思いやる仕様に
しよう。そんなシンプルな「こころがけ」が、ソフトウェアの品質や生産性と
大きく関わる。

具体的には、こういうこと。

システムを実際に使う「ユーザー」を思いやろう。
ストレスなく使え、「思った機能がそこにある」ようなシステムにしよう。そ
のユーザが普段使っている言葉のUIを提供しよう。製品開発では、具体的な
「顧客像」を得るのが難しい。その場合でも、ペルソナ、のような「おもいや
りproxy」を立てて、具体的な相手を意識し、その相手を思いやろう。

人が読みやすいコードを書こう。
コードはコンピュータに読ませるために書くのではなく、このコードを読む相
手を思いやって書く。このコードは読みやすいだろうか?と常に自分に問いか
けよう。if(flag)と書かない。flagはコンピュータの立場の言葉。このコード
を読んでいるのはペアプロの相手、将来のメンテナンス、あるいは将来の自分
だ。読みやすいコードを書こう。

コードの使い手が使いやすいインターフェイスにしよう。
自分が書くコードは、その実装ではなくインターフェイスに着目し、それが使
い手から見てわかりやすいか、ということを常に吟味しよう。TDD(テスト駆動
開発)は、このアプローチの極端な手法。最初に使い手が「こうやったらこう
なる」という想定をテストとして書いてしまい、その後で、そのテストをパス
する実装を書いていく。そこまでやらなくても、実装よりも、インターフェイ
スを入念にデザインしよう。名前重要だ。

読みやすいコードが書けることを支援しよう。
RubyのActiveSupportを見たときにびっくりした。コードを書く人が、20分前、
という時間を20.minutes.agoと書ける。言語やライブラリの側で工夫をして、
コードを書く人が、読みやすいコードを書けることを支援しよう。
ActiveSupportより前の時代でも、Ward Cunningham も、today = november(20, 1997)
というコードを書いている。

コードには、「意図」をコメントしよう。
他人のコードを読んでこう思ったことはないか?「なぜ、ここでこうしている
のだろう?」人間というのはある事柄を理解をするときに、その事柄とその事
柄の理由を対にすることで、納得することができる。読み手を思いやり、コード
には、なぜ、をコメントしよう。7*24*3600と書いたら、「週7日24時間無停止」
というコメントを1行入れるだけでもぜんぜん違う。

コードには、「テスト」を付けよう。
コードをリファクタリングしようと思ったときや理解しようと思った時、テス
トは取っ掛かりとして現状とずれたドキュメントよりも役に立つ。

モデルにも、「意図」をコメントしよう。
UMLやER、業務フローなどのモデルは、読み手が読むのは時間がかるものだ。
読み手を思いやるコメントを入れよう。ここでも、「意図」が重要だ。なぜ、
こう分析したのか。そもそもこのモデルを書いた理由はなんだ?

アーキテクトも実装に参加しよう。
これはJim Coplienの「Architect Also Implements」という組織プロセスパター
ンだ。「私は世界を作った。この世界で下々は開発すべし。」というマトリク
スの「アーキテクト」は間違っている。そんな「俺俺フレームワーク」には思
いやりがない。使う側に立ったフレームワークやアーキテクチャを作るには、
その上で動くアプリケーションの実装に、アーキテクト自身が参加することが
必要だ。

品質保証、テスト、は違った視点の思いやりだ。
「相手の裏をかいてやろう」という考え方ではなく、「相手の気づいていない
ことを気づいてあげよう」と考えよう。あの人ならどう考えるかな、と想像力
を使って、テストをしよう。(to be continue)(平鍋)

[1] : オブラブイベント 2007夏 帰郷 公開資料
       http://www.objectclub.jp/event/2007summer/files
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┗【コラム】iPhoneは日本の壁を破るのか?

いやー暑いですね。ようやく夏だ!といえる天気になってきました。猫まっし
ぐら、もとい夏まっしぐら、ポーツマス!(謎)な毎日です。水不足は解消され
たのでしょうか〜?最近TVでやってくれませんね。その後が気になります。

さてアメリカでは、iPhoneが発売され何かと話題になっています。もう一月に
なるわけですが、やっと落ち着き始めているのではないでしょうか?
日本はどうですかねー。秋葉原のモバイルプラザで販売が開始されました[*1]。
現時点で日本で入手するには、ヤフオクとか購入代行とかいろいろあったので
すが、選択肢として安心はできるでしょう。高いなと思う部分は安心料金です。

@日本はマーケットが小さい
多くの方が書いているとおり、マーケットの小さい日本はほっといてアジア対
応は中国がメイン考えるのが妥当と思います。中国の携帯電話ユーザ数は聞い
て驚くこと無かれ「約4億6,300万」[*2]なんですよ。しかもまだ増え続けてい
ます。それに引き換え日本の市場は、国民の75%以上が保有する時代に。さら
に伸び悩みでキャリア間の争奪戦です。それでも所詮1億に届くかどうかです。

@iTMSで疲れた
何とかiTunes Music Storeを日本でも始められたAppleですが、日本だけはサー
ビス開始まで2年以上もかかりました。実は日本は20ヶ国目なんです。価格も日
本だけ複数で、とか。AppleはiTMSでは頑張れたのですが、iPhoneで粘り強く交
渉ができるか?もうiTMSの展開で後悔しているのではないかと・・・

@iTMSでわかったように日本流は難しい
もし日本に入ったとしても、成功への問題と思われるのは価格と利用方法なの
ではないかと思います。iPhoneの値段は日本円に換算して6〜8万円です。うわ
高っけぇ〜と思っても不思議ありません。前述のモバイルプラザでの価格なら
MacBookが買えてしまいます。PCと携帯が同じ値段?そんな携帯売れるのでしょ
うか?
日本では夏モデル、冬モデルといった具合にキャリア主導でモデルチェンジが
行われ、そのたびに古いモデルは1円といった格安価格で売られる状況です。
また新機種の価格も1〜2万円前後と非常に安いです。これら本体の価格は実は
通話料に上乗せされているので、日本は通話料が高い[*3]訳ですが、でもどん
どん目先を変えて機種変更をさせ、顧客を囲うというのは「日本流」だと思い
ます。
これは何も携帯電話だけではありません。日本では自動車がいい例ですね。日
本は新車が3年で車検となります。メーカーはそこに併せてマイナーチェンジや、
モデルチェンジをします。車検を通すときにどうせなら新車に・・・という意
識が働くもんです。特にディーラーに行くと新車を見てしまいますし。最初の
車検で下取りすれば、車検価格と併せてもそれ程の差額になりません。それな
ら新車だよなーと思うのが日本人と思います。そこで他のメーカーに鞍替えさ
れては困るので、どのメーカーも同じ周期でモデルチェンジを繰り返します。
まさに携帯も同じです。携帯に車検はありませんが、概ね2年ぐらいするとバッ
テリーが寿命となるので、買い替えを考えます。2年も使っているとポイントが
貯まったり、機種変更購入時の割引が最大になっていたりするので、お得感が
高く、買い替えが促進されます。料金もどんなに高くても2万円ぐらいでしょう
(ポイントや割引を適用した場合)。このように自動車の車検制度や、携帯電話
の通信方式やSIMロック、販売ネットワークといった日本ならではの壁が日本進
出を阻んでいる要因であることは間違いないでしょうし、iPhoneのマークが林
檎でなくキャリアマークになったり、激安価格で売られるという姿は想像もで
きないのです・・・[*4]

利用方式に関する問題としては、iPhoneはパソコンがないと何もできないんで
す。日本はインターネット利用者数は多いのですが、携帯からの利用が多く、
実際パソコンの普及率はそれほどでもないのです。iPhoneを使うのにiTunes入
れないといけないし、多くの家庭用PCがWindowsを買ったときのままです。
iTunesすらインストールできないPCオンチな方が多いのも事実です。
それとパケット代です。今携帯のコンテンツはパケット定額時代ですが、PC
ビューワーで見るPCコンテンツは、パケット定額ではないケースが多いのでは
ないかと思います。iPhoneはSafariしか入っていない訳で、これで定額でなか
ったら恐ろしいパケット代が請求されるのは眼に見えています。こういった
「日本の現実」にどう対応するのかは疑問の残るところでしょう。

@タッチパネルは片手親指打ち(テンキー信仰)を超えられるか?
ナンバーポータビリティでキャリア変更が容易になったこともあり、ますます
モデルチェンジの流れは加速しているように見えます。そのたびに煌びやかな
新しい機能が追加され高性能化しています。これら個々の機能を見れば、ワン
セグにカメラやナビなど様々な点でiPhoneより優れています。でもそこはApple。
UIでは他のメーカーの追従を許さないところがあります。iPhoneのウリは正に
ソコな訳です。ただ日本のポケベルから携帯メール、写メといったムーヴメン
トと、日本のテンキー入力信仰。これとiPhoneはちょっと異質かな?と。
なんせ電話よりメールの利用時間の方が長いのです。海外ではメールというよ
りSMS[*5]な訳ですが、日本人の片手親指打ちメールの速度は半端じゃありませ
ん(笑)。SMSではそんな高速入力はしないのですかねぇ〜?タッチパネルの採用
はWebやiPod利用には画期的ですが、メールに関して速度でどうかな〜と思って
います。

まぁ私のようなマックヲタはiPhoneが日本で正規に出たら迷い無く買うのかも
しれませんが、アメリカのニュースで見たような騒ぎにはならないのかなぁ〜
と思っています。(きしだ)

[1] : MobilePLAZA 秋葉原で144,900円で売っています。詳しくは
      http://www.mobileplaza.co.jp/akihabara

[2] : 中国の易観国際(Analysys International)の最新レポート
     「China Telecom Operator Market Quarterly Tracker Q1 2007」より

[3] : 販売奨励金(インセンティブ)は、携帯電話事業者が販売代理店に支払っ
      ている報奨金で、これの賛否は様々です。ただし日本だけでなく海外で
      もこのような仕組みは取り入れられています。
      参考文献:
       http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070216/262182/?ST=keitai

[4] : 日本の携帯はキャリアが一度買い取る形式になるので、メーカーマーク
      でなく、キャリアのマークが前面に押し出されます。ということは林檎
      マークの行方は?それに概ね2世代ぐらい前の携帯は1円か0円になってい
      ますが、例えば1年前のiPhoneが1円で売れるのか?などブランディング
      を大切にするAppleですから壁は高そうです。

[5] : SMS - Short Message Serviceの略。電話番号で短いメッセージを伝達す
      る。Docomoだとショートメール、auならCメールなどが該当。
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┗【アンケート】気になるシステム業界 ホントのところ

今週は「開発するときに、1つだけ自由になるとしたら?」のホントのところ。
プロジェクトに参加したときに、「これが○○だったらなぁ。」と思うことは
ありませんか?1つだけ自分で自由に出来るとしたら、どれを選びますか?

  言語。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=162&choice=0
  顧客(クライアント)。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=162&choice=1
  チームメンバー(仲間)。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=162&choice=2
  開発ツール・環境。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=162&choice=3
  開発プロセス。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=162&choice=4
  その他。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=162&choice=5
  それは秘密です。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=162&choice=6
  ちょっと語らせて!
     詳細をこのメールに返信ください!!

アンケート結果はオブジェクト倶楽部サイト上にて公開します。お楽しみに。
なお、前号「夏休みどのぐらい?」の結果は公開中。ぜひご覧下さい。
⇒http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vol161/PlonePopoll_results2
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┗編集後記

こんにちは、編集人です。子供のころの夏休みというと、始業式の数日前に泣
きべそをかきながら宿題をやったことを思い出します。読者の皆さんはいかが
ですか?いまどきは小学生の6人に1人が受験をするそうです。自由工作や家族
との旅行も無く、夏期講習の夏休みというのも大変ですね。大人よりハードな
のかもしれません。がんばれ受験生!

さて、オブジェクト倶楽部8月カレンダーの電子データを公開します。
7月は「PFのプラクティス ふりかえりの進め方」です。
このイラストが机の上にあるだけで、いつでも基本を思い出せる優れものです
よ。
http://www.ObjectClub.jp/special/#calendar

今週の強引な一言
*** 青天の霹靂(ことわざ)***
青く晴れた空に突然に起こる雷から、思い掛けず起こる突然の大事件のたとえ。
プロジェクトの場合には、雲行きが怪しくなってきた前兆が必ずどこかに現れ
ます。見えたり聞こえたりするものばかりではなく、気配で感じることもある
かもしれません。
(上田雅美)

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